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二○○二年発表の地球温暖化対策推進大綱で、林野庁は「二・九%減分の吸収を確保するのがやっと」との予想を公表した。
だが、現状は「この達成でさえも難しい」(同庁担当者)ようだ。
木は生き物であるため、成長過程にある森と成熟した森では、吸収量が違う。
三・九%を確保するためには若い木を植え続け、森林の手入れをしなければならない。
予算が減額される中で、森林整備事業の拡充や新規の植林は難しくなっている。
しかも、林野庁は膨大な額の国有林野事業の累積債務を持っている。
一九九八年の国有林改革で、当時三兆八○○○億円に達していた債務のうち、二兆八○○○億円を一般会計につけ替え、残り一兆円を五○年かけて返済するとした。
ただ、返済分の利子は一般会計からの補充だ。
林野庁は「累積債務と温暖化対策事業は違います。
予算を債務に充当したら、肝心の吸収量にカウントされる森林の整備はできないのですから」(同)と強調する。
この巨額債務への批判がくすぶる中で「国民が新規に予算を認めてくれるかどうかは分かりません。
ただ、吸収源確保をやれといわれれば、無から物事を生み出すことはできません。
炭素税などを財源に森林整備を進める必要があるでしょう」(同)という。
日本の政策は京都議定書によって、一九九七年当時は予想もしなかった影響を受けている。
あるエネルギー政策の研究者は、流行語にからめてこう語る。
「京都議定書の日本に与えた影響をひとことで形容するなら『呪縛」です。
議定書の義務を守ろうとするなら、個人や企業の自由な活動の制限に進むか、または公共事業、原発、森林整備という方向に向かうしか、選択肢はないのですから。
この現実を直視することなく国会は批准してしまいました。
また、日本が一生懸命に義務を守っても、議定書には地球温暖化を防止する効果はあまりありません。
そして、日本は議長国として、この議定書をまとめてしまった以上、この束縛から逃れることができません」。
国内対策によらない京都議定書の義務の達成方法がある。
海外から排出権を買う方法だ。
政府の地球温暖化対策推進大綱は、温室効果ガスのうち基準年比一・六%分(一九○○万トン分)を、京都メカニズムを使って削減する予定だ。
ただ、現実の排出量の急増をみると、それだけでは足りないだろう。
二○○一年から第一約束期間の終了時点の二○一三年までCO2の排出量を横ばいとすると、日本は議定書上の義務を達成するには一億三九○○万トン分を減らさなければならない。
二つの結果IEAの場合現時点から排出量取引だけで京都議定書上の義務を達成しようとすると、一トン当たり一○ドルとした場合に、購入費用は一五○○億円程度になる。
日本国民の税金を「空気」のため、他国へ支払うことに賛否両論があるはずだ。
だが、国内措置だけでのCO2の削減は難しい。
海外からの調達が、近未来の日本で大きな課題になることは間違いない。
未来を占う上で参考になりそうな二つの興味深いシミュレーションがある。
一つは国際エネルギー機関(IEA)が行った国際間の排出権取引の実験だ。
もう一つはナットソース・ジャパンと三菱総研が国内企業と行ったものだ。
これらから示唆されるのは、「CO2の買い手になる日本の立場の弱さ」という事実だ。
まずIEAの実験からみてみよう。
これは一九九九年に一七カ国の代表者が集まって行われた。
その当時は京都議定書から離脱していない米国とオーストラリアが参加している。
一年の取引を一回(約二時間)とし、二○○八年から一二年までの第一期間の取引量を五回(五年分)、事前取引を二回(二年分)、二○一二年以降の調整取引を一回、計八回行うものだ。
各国は国内での削減を行うか、国際排出権取引、CDMやJ1といった京都メカニズムを利用して、議定書の目標の達成を目指す。
日本からは資源エネルギー庁の担当者が経済学者やシンクタンクに応援を求め実験に参加した。
そして次のような結果が示された。
まず、取引価格は一炭素トン当たり六○ドルまで急騰したあと、後半には二五ドルまで急落した。
当初、各国は動向がよく読めず、ロシアなどの余剰分を持つ国が販売量を渋った。
その結果、疑心暗鬼から各国が買いに回り、価格が急騰した。
その後に当初売り渋った国から安い排出権が放出され、また買い手各国からの注文が減ったために、次第に値が下がった。
日本は、各国から必ず買いに回ると予想された。
これまで示した通り、国内措置だけでCO2を削減すれば日本は大変なコストがかかる。
これは国際的に知られた事実だ。
「俗なたとえでいえば『ネギを背負った力垂とみられていたわけです」と参加者は語る。
そこで日本の代表は、撹乱作戦に出た。
国内の排出量の削減を進めると同時に、取引市場の動きに応じて臨機応変に対処した。
価格が下がったら小刻みに買いを入れ、日本が買うと予想されたときに注文を出さない、あるいは売りを出すなどの形で、売り手国を動揺させて排出権が売り急がれやすくした。
すると、「カモ」とみられていた日本は参加国中三番目の安い負担で、取引を終えることができた。
ただ、「現実の政府には、策をめぐらせた為替ディーラーのような行動はできないでしよう」と、参加した経産省の戒能一成氏(現経済産業研究所研究員)は語る。
即座の意思決定が必要な排出権の売買を、真議を重ねて決裁していく日本の官僚機構は行えない。
加えて、日本のエネルギー統計は詳細で、毎月・毎年確実に公開されるため、「いわばカードをみせ次に三菱総研らの実験をみてみよう。
この実験は二○○二年一○月に行われJEMS2と呼ばれた。
出光興産、伊藤忠商事、大阪ガスなど三四社が参加した。
参加企業には仮想企業のデータが与えられ、企業活動での利益確保と、CO2を排出目標以内にすることが求められた。
参加企業は工場での省エネルギーなどの自社対策、排出権取引、海外における削減活動(京都メカニズムによるCDM、J1など)、森林などの国内吸収源からの排出権という、大きく分けて四つの調達手段を使い、目的を達成する。
二○○六年から三年までを想定した。
実験では審判の三菱総研が二つのケースを示した。
売り手国が、毎年決まった量を売りに出す場合(ケース一)と、売り惜しんで価格つり上げを行う場合(ケース三だ、結果として、ケース一では、取引開始直後に排出権価格は一トン当たり三○○○円から六○○○円に、二○○六年中に急騰。
しかし、その後は急落し、三○○○円前後で安定的に推移した。
ケース二では当初四○○○円前後で始まった取引は一時一万二○○○円程度の三倍にまで急騰。
しかし、各企業のCDMやJ1が排出権を生み出し始めた二○一二つのシミュレーション結果三菱総研の場合ポーカーとなり、他国を動揺させて市場を動かすことが難しい」(戒能氏)という。
CO2排出権の売り手国の動向が国際的な取引価格に影響を与える。
そして、買い手国の日本は国も企業も戸惑う。
これらの実験は、未来にこのようなことが起こりうることを示しているようだ。
そして、国も企業も早めに動かなければならないこと、そして京都海外の動向次第の展開に○年ごろから価格は下落に転じ、最終的な価格も京都メカニズムによって生み出された排出権の価格とほぼ桔抗する四○○○円前後で取引された。
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